背中が乾燥する原因と症状|肌トラブル予防のための対策【医師監修】

乾燥肌、敏感肌の人の多くは、顔だけでなく背中のカサつきに悩んでいる方も多いかもしれません。男女問わず、乾燥しやすい季節になると背中の乾燥を感じたり、カサカサ、かゆみが気になって不快感を感じたりする人もいるのではないでしょうか。
手が届きにくい部分だからこそ搔きにくく、うるおいを与えるケアもしにくいとなるとどのように改善したらいいかわからない…そんな悩みに行き詰ってしまう人もいます。
今回は「背中の乾燥」にスポットを宛てて、乾燥の原因や症状、背中の肌トラブルを回避するために日常に取り入れやすい、効果的な乾燥予防ケアをご紹介します。

背中 乾燥

背中が乾燥する原因と注意したい肌トラブル

顔と同じように、背中にも肌荒れは起こります。目の届かない部位である背中は、かゆみや乾燥のトラブルに気が付きにくい箇所でもあります。
ここでは背中の乾燥について、なぜ乾いてしてしまうのか、背中の皮膚にはどんなトラブルが起きやすいのかをご紹介します。

背中が乾燥する原因

背中は角層が厚く、皮脂腺が多い部位です。そのため、皮脂分泌も活発に行われているので、乾燥するイメージがあまりないかもしれません。
しかし、もともと肌が乾燥しがちな肌質の人や、摩擦などの外的刺激によって水分と油分のバランスが崩れてしまう場合、バリア機能が低下してしまうことがあります。
バリア機能が低下した肌は、肌内部の水分の蒸発を防ぐ働きが衰え、乾燥がさらに促進されてしまったり、刺激に敏感になってかゆみが起きたりしがちです。

背中に起きやすい外的刺激は下記のように複数あります。

  1. 入浴時、熱いシャワーを当てたり、ゴシゴシとあかすりで擦るような洗い方をする

    このような刺激の強い洗い方は、気持ちよく一時的な爽快感はありますが、皮膚表面の皮脂膜が壊されて角質層の水分が失われやすくなります。

  2. 乾燥する秋冬などに、化学繊維やウール素材などの衣類が起こす静電気

    吸湿し熱に変える機能性インナーなど、化学繊維を使った肌着と皮膚の間で起きる静電気も皮膚への刺激になります。

  3. 無意識に過剰に掻いてしまう

    かゆみを感じて知らず知らずのうちに掻いてしまうことがありますが、孫の手を使ったり、手が届きにくい部位だったりすると力加減ができず、必要以上に掻いてしまうことがあります。

背中が乾燥する原因

背中の乾燥で起こりうるトラブル

背中の乾燥が進行すると、乾燥性皮膚炎になる場合があります。乾燥性皮膚炎は、皮脂欠乏性湿疹とも呼ばれ、角質層の水分が不足してかゆみや赤みが起き、湿疹を併発している状態です。
また、背中に起きやすいトラブルが背中ニキビ。背中の皮膚が乾燥することによって肌のターンオーバーが乱れ、古い角質が溜まりがちになると、角栓のつまりを起こし、菌が毛穴の中で増殖しやすくなってしまいます。背中は皮脂腺が多いためニキビができやすく、アクネ菌が背中の皮脂をエサに繁殖して炎症が生じます。
アクネ菌のほかにも黄色ブドウ球菌などの細菌や、毛包炎という吹き出物ができることやカビの一種であるマラセチア菌(癜風菌)が繁殖するケース(日和見感染)もあります。
背中のニキビに悩まされている方は、顔のケアと同じようにニキビに効果的な美容液を背中のケアにも導入することをおすすめします。
その他、海水浴などの際、面積が広く紫外線を受けやすい背中では、過度の日焼けで花弁状色素斑などを起こすケースもあります。皮膚を保護しようと発生したメラニン色素がうまく排出されず、炎症後色素沈着として茶色く残ってしまうため、要注意です。

背中の肌トラブルの見分け方

背中に起きる様々な肌トラブル。なかなか自分で見えないからこそ、どのようなポイントに着目すべきかしっかりとおさえておきましょう。

ニキビ

毛穴の皮脂詰まりを原因の炎症を起こし、発生した吹き出物をニキビと呼びます。ポツポツとした吹き出物が単体でできやすいのが特徴で、「赤ニキビ」「白ニキビ」「黄ニキビ」など、種類があります。
発生しているニキビの種類によってケア方法もちがうため、注意が必要です。乾燥肌の方は、肌のバリア機能が定価しているため、かゆみを伴うこともあります。ニキビができると洗いすぎたり、さっぱりとしたテクスチャーのスキンケアを使用したくなりがちですが、しっかりとした乾燥予防もあわせて行いましょう。

マラセチア毛包炎

毛穴に赤い吹き出物ができたら、マラセチア毛包炎の可能性もあります。一見ニキビに似ているため、この2つを見分けることは難しいとされています。
マラセチア毛包炎の特徴は、ニキビと比べると比較的多い数のポツポツが発生することや、かゆみを伴いやすいこと。
ニキビケアをしても改善が見られなかったり、かえって数が増えたりする場合は、マラセチア毛包炎の可能性があります。肌の症状が落ち着かない場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。

花弁状色素斑

肩から背中にかけてできやすいシミで、数mm~1cm以上の大きさの花びらのような形のシミができることが特徴です。
紫外線などをきっかけにメラニン色素が分泌され、色素沈着してしまうことが原因で発生するため、毎日の紫外線対策が重要。色が白い方や、日焼け後に肌が赤くなるタイプの方に起こりやすいといわれています。

背中の乾燥対策

背中の乾燥を防ぐため、きちんと乾燥を予防したい…そう思っても、見えない、手が届かない、広範囲という三重苦を背負っている背中。どのようにケアすれば効果的なのでしょうか。

保湿クリームで乾燥を防ぐ

背中も顔も、基本的なスキンケア方法は同じ。お風呂上がりや朝晩のタイミングで、ローションや保湿クリームを十分に背中へ塗布し、乾く隙を与えないことが大切です。
肌の水分量を高め、油分で膜を作ることで、肌みずからが持つバリア機能を高めることが目的。特に入浴後は皮膚の水分が蒸発しやすく、乾燥しやすいのでケアするタイミングとしてはベスト。背中は確認しづらい部位のため、洗面所の大きな鏡を見ながらケアするのもいいでしょう。
背中のスキンケアには、長い柄のついたパットやスプレータイプの化粧水なども活用することができます。また、乳液状のボディミルクは、ボディクリームよりも水分量が多いので伸びがよく、広範囲に塗りやすいのでおすすめです。

ぬるめのお湯に入浴する

40℃以上の熱いお湯に長時間浸かるような入浴法はNG!皮脂が奪われてしまい、乾燥を招いてしまう可能性があります。
湯船にぬるめのお湯をはり、長風呂にならないように入浴しましょう。保湿成分配合の入浴剤なら、お風呂上がりも乾燥を防ぎ、全身しっとり感を保つことができます。
背中を洗う際は、低刺激の石けんやボディソープを使い、柔らかな綿のタオルで洗うと良いでしょう。お風呂ケアにありがちな、ザラつきをとるためのスクラブ剤などは刺激が強いため避けましょう。ナイロンタオルやブラシも禁止です。

肌に負担の少ない衣服を着用する

化学繊維や静電気が起きやすい素材の衣類、またちくちく感が気になるような衣類は、肌の刺激になったり、かゆみ、赤みにつながる可能性があります。
綿素材などの通気性が良く、肌に優しい素材でできた衣類を着用するように心がけましょう。

寝具を見直す

意外と盲点なのが寝具。就寝中に背中を預けるシーツや布団は、定期的に洗濯したりしっかり乾燥させたりして、清潔に保つことが大切です。
また、電気毛布・電気シーツの使用はできるだけ避けたほうが良いでしょう。肌の表面を乾燥させやすく、睡眠中にコントロールができない点も懸念点です。

室内を適切な湿度に保つ

冬場の暖房や夏のエアコンは、室内を乾燥させがちです。エアコンを使用する部屋や乾燥する季節は、加湿器を使って積極的に部屋の湿度を保つことも心がけましょう。肌の乾燥を防ぐ保つためには、60~65%ほどの湿度設定を目安に考えるとよいでしょう。
また、エアコンの風量、風向きにも注意し、直接風に当たらない工夫も大切です。
加湿器がすぐに用意できない場合は、濡れたタオルをハンガーに吊るして湿度を保つ方法もおすすめ。手軽に室内の湿度を高めることができます。

ホルモンバランスを整える

ホルモンバランスが整うと、肌のターンオーバーが安定し、バリア機能が保たれやすくなります。
ホルモンバランスの改善には、生活習慣を整えることがもっとも効果的。質の高い睡眠を取る、栄養のバランスが取れた食事をする、適度な運動をする、ストレスをため込みすぎないなど、健やかな肌を保つために生活習慣を見直してみましょう。

背中の乾燥が悪化したときの対処法

背中の乾燥対策をしていても、状況によっては悪化してしまうときがあります。症状が強かったり、かゆみがおさまらない場合は、別の対処が必要です。
乾燥がひどく進んでしまったり、掻き壊しなどで症状が悪化していたりする場合は、市販の医薬品も選択の一つ。さまざまな種類の外用薬が市販されていますが、薬剤師のいる薬局で相談の上、購入すると良いでしょう。
炎症、湿疹、ニキビなどが起きている場合は早めに医療機関(皮膚科)を受診し、医師に相談しましょう。皮膚科を受診すれば適切な抗炎症薬や治療薬を処方してもらえますし、アトピー性皮膚炎などの疑いについても診断を仰ぐことができるため、早めに受診することが大切です。処方された外用薬は、用法・用量を守った使用が重要なため、自己判断で使わないことも大切です。

背中の乾燥対策に関するQ&A

背中の肌荒れは、乾燥が原因で起こる場合も多くあります。手や足などと比べて、背中は自分ひとりではクリームをぬるなどのケアがしにくい部位。ここでは、そんな背中の保湿について、よくある質問にお答えします。

Q. 背中ケアに適した洗浄アイテムは?

A. セラミド、ヒアルロン酸、植物オイルなどのうるおい成分が豊富に含まれた洗浄アイテムを使用すると良いでしょう。
乾燥ケアは与えるケアも大切ですが、落とすケアも重要です。肌にうるおいを残したまま洗浄できるため、かゆみや肌荒れを防ぐことができます。
また、ボディソープや石けんは、よく泡立つアイテムを使うことがおすすめです。たっぷりの泡で洗うと肌に負担を与えにくいほか、毛穴の汚れを吸着し、汚れを洗い流しやすくもなります。
背中ニキビができているなど、アクネ菌やマラセチア菌など、肌荒れの直接の原因となる常在菌が明白な場合は、殺菌効果のある有効成分が入った薬用石けんを使っても良いでしょう。抗炎症作用のあるアイテムや、真菌を洗い流しやすいタイプなども販売されているので、自分のお肌と相談しつつ選んでみてください。
背中のケアのポイントについては、下の記事でも紹介しています。ぜひ目を通してみてくださいね。

Q. 背中の肌荒れが急に起こる原因とは?

A. 吹き出物やかゆみが急に起こる場合は、じんましんやかぶれなどの可能性もあります。
じんましんは急な寒さや乾燥によるバリア機能の低下のほか、食べ物のアレルギーやストレスを原因に起こる場合もあります。一般的には数時間~1日以内でおさまることが多いとされているので、発生したときの目安にしてはいかがでしょうか。
かぶれの原因は、服やアクセサリーの素材が影響していることがあります。肌が原因物質に触れたことで赤くなったりポツポツができたりするため、アレルギー検査で自分が何の成分に敏感かを知っておくと安心です。かぶれが起きてしまったときは原因物質を取り除く必要があるため、体を洗い、清潔に保つことが大切です。

背中の乾燥は先回りして予防を

背中は角層が厚く、皮脂腺が多い部位ですが、目が行き届かずケアがおろそかになってしまう部位でもあります。
知らず知らずのうちに背中の皮膚が乾燥すると、カサつきやかゆみはもちろん、ニキビや湿疹などの原因になる場合もあるので注意が必要です。顔や手足などと同様に、しっかりと保湿を行い、乾燥予防を徹底しましょう。
ローションやクリームなどを塗り重ねることが面倒という方は、ひとぬりで化粧水と乳液、美容液の成分を肌にあたえることができるオールインワンアイテムを使用することもおすすめです。肌の不調で悩む前に、先回りした乾燥予防を心がけましょう。

【監修医師】久保田 潤一郎
医学博士 久保田 潤一郎 もっと詳しく
久保田潤一郎クリニック院長 元杏林大学医学部助教授(形成外科学)
日本形成外科学会専門医・日本レーザー医学会永年レーザー専門医

杏林大学医学部卒業。慶應義塾大学病院に勤務し、医学博士号取得。後に、杏林大学医学部助教授(准教授)として診療を行うかたわら、後輩の指導にも熱心にあたる。数々の臨床・研究を重ね、多くの形成外科・美容外科の治療のほか、レーザーや光線療法により様々な皮膚のトラブルに対処し、皮膚レーザー療法を確立。国内外の医学会だけに留まらず、各種講演会でも積極的に講演し、自らの治療・基礎研究を主とした様々な情報や最新情報を広く伝えている。

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