乾燥肌は多くの肌トラブルの原因であり、カサカサ、かゆみ、肌荒れを引き起こす厄介な肌悩み。 日常的にうるおいが失われがちな乾燥肌には、日々のスキンケアのほか、食事療法によって肌質改善を図るのがおすすめです。健やかな肌に欠かせない栄養素と、効果的な摂りかたを知ることで、身体の内側から乾燥予防ケアできます。 ここでは、乾燥肌と食べ物・栄養素の関係や、積極的に摂りたい栄養素について詳しくご紹介します。身体の外側だけではなく、内側からキレイな肌を作るためのヒントとして参考にしてみてください。
乾燥肌の人に食事改善をおすすめする理由
肌の水分量が低下している乾燥肌。実は、スキンケアでどれだけ水分を与えても、肌が健やかでなくては根本的な乾燥肌の改善には至りません。 乾かない美肌をキープするためにはどのような対策が必要なのでしょうか。
肌状態に影響する食事
肌のコンディションには食事や生活習慣が大きく影響します。 乾燥肌の場合、肌に備わっている「肌のバリア機能」の働きが低下し、肌に水分を蓄える力が弱まっていると考えられますが、肌のバリア機能を正常に保つためには、食事からの栄養が不可欠です。 バリア機能は肌表面の角質層にある下記の3つのしくみから成り立っています。
■ 天然保湿因子(NMF):肌のうるおいを保ち、肌の柔軟性とハリ・弾力を保つ
■ 細胞間脂質:主にセラミドからできていて、肌細胞間を埋め、水分の蒸発を防ぐ
このバリア機能は、常に細胞が生まれ変わる「ターンオーバー」によって健やかに保たれています。生まれ変わるための細胞を構成するのは、普段私たちが口にする食事に含まれた栄養素なのです。 そのため、栄養バランスが偏ると、例えば肌のうるおい成分が不足したり、ターンオーバーが乱れたりして乾燥を招いてしまうことも。また、ファストフードに頼りすぎて塩分・糖分・脂質を摂りすぎると、肌の代謝に必要な栄養素(ビタミンB群など)が消費されて不足し、乾燥肌や肌荒れの原因になるケースもあります。
肌に必要な栄養の摂り方
栄養の摂取だけならサプリメントという選択肢もありますが、これはあくまで栄養補助食品であり、多くの栄養をサプリメントだけに頼るのはお勧めできません。脂溶性ビタミンやミネラルの摂取過多など、過剰な栄養が内臓に負担を与え、中毒症状が起きる危険性もあります。 バランスが取れないような摂取の仕方よりも、普段の食事から適量の栄養素を取り入れる方が身体と肌にとってよいでしょう。 乾燥肌でお悩みの場合は、スキンケアによる乾燥予防に加え、食事の改善を含めた生活習慣に関して対策をすることが大切なのです。
乾燥肌の人におすすめの栄養素と食べ物8選
乾燥肌の改善のために、食事によるバランスの取れた栄養の摂取が重要であることがわかりました。 では具体的にどのような栄養素が乾燥肌の人におすすめなのでしょうか。
タンパク質
身体を構成する要素のうち、水分を除けば最も多いのはタンパク質。食事から摂り入れられたタンパク質は、消化によってアミノ酸に分解され、健康な肌を作る材料になります。 約20種類のアミノ酸が結合してできていて、細胞の構成のほかにも肌のターンオーバーをサポートする働きがあります。 特にタンパク質を多く含む食品は、卵、納豆、豆乳などの大豆製品、魚、肉など。牛乳やヨーグルトなどの乳製品もタンパク質豊富です。三大栄養素の一つでもあり、肌だけでなく人間の生命や身体活動などに欠かせない栄養素です。最近では、タンパク質を多めに摂取できたり、気軽に摂取できる商品なども市販されており、手軽に取りやすくなってきています。
亜鉛
亜鉛には、タンパク質の代謝を促し、細胞の新陳代謝などの体内のさまざまな働きをサポートする働きがあります。肌のターンオーバーの促進に影響があるとされている栄養素です。また、免疫力の向上にも関係があると見られています。 牡蛎、蟹、赤身の肉など、肉類や魚介に多く含まれる重要なミネラルですが、亜鉛は汗や尿から排泄されるため、よく汗をかく人やお酒を多く飲む人は不足しがち。アルコールの代謝のためにも体内の亜鉛が使われてしまうので、しっかりと補うことが必要です。
必須脂肪酸
必須脂肪酸は、肌を外的刺激から守ってくれる「皮脂」の原料となる栄養素です。 脂肪の構成要素である脂肪酸のうち、体内で合成できないため食事で摂る必要があるものをいいます。 皮脂が不足すると、肌の水分と油分のうるおいバランスが乱れて肌のバリア機能が低下し、乾燥を招いてしまうとされているため、乾燥肌の人ほど意識する必要があります。 ベニバナ油、コーン油などの植物性油などに含まれていて、最近話題のオメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸なども同じ必須脂肪酸の仲間です。オメガ3脂肪酸の一つであるEPAを多く含む食品としては、青魚などが挙げられます。
ビタミンA
ビタミンAは、皮膚や粘膜のうるおいを健やかに保ち、角質層に含まれる天然保湿因子(NMF)の生成を促します。ビタミンAの不足は肌のカサつきにつながるため、しっかり摂りたい栄養素です。 緑黄色野菜に含まれるカロテノイドの一種、β-カロテンが、体内で必要に応じてビタミンAに変換されます。そのため、β-カロテン豊富なにんじんやカボチャ、小松菜、ほうれん草など、緑黄色野菜を摂取することがおすすめ。ほかに海藻類、卵黄、レバーなどにも含まれているので、献立への応用もききやすく効率的に摂ることができます。
ビタミンB2
ビタミンB群の一種であるビタミンB2は、脂質の代謝をサポートし、皮膚や粘膜などの細胞の再生に役立つ栄養素です。 ビタミンB2が不足すると、肌荒れやニキビの発生を引き起こしやすくなってしまいます。特に、ビタミンB6と一緒に摂ると、肌の細胞が生まれ変わるサイクルであるターンオーバーを促す働きが期待できるとされています。ビタミンB2が多く含まれている食べ物には、レバー、卵、納豆、アーモンドなどがあります。
ビタミンB6
ビタミンB6は別名ピリドキシンとも呼ばれるビタミンB群の一種。タンパク質の代謝に必要な栄養素で、タンパク質の分解・合成を助け、結果として皮膚や粘膜の健康維持に働きます。 ビタミンB6が欠乏すると、タンパク質の代謝異常が起こってしまい、肌トラブルが起きやすくなります。鶏むね肉や、イワシやマグロなどの魚、にんにくやサツマイモ、バナナ、アボカドなどに多く含まれています。
ビタミンC
肌の酸化を抑えるとともに、ハリ・弾力を保つコラーゲンの生成を促進します。さらに、ビタミンCはメラニン色素の生成をおさえ、色素沈着やシミを防ぐ働きもあるため、紫外線対策にも重要な栄養素です。 美しい肌を保ち、透明感のある肌に導く美白ケアにも効果的なビタミンCですが、体内で作ることができないため、食事から摂取することが必要です。 レモンをはじめとした柑橘類、イチゴ、アセロラ、キウイなどの果物、またブロッコリー、小松菜、赤ピーマンなどにも多く含まれます。水溶性で加熱や水にさらすと栄養素が減少するため、できるだけ生で食べることがポイント。ビタミンC豊富なフルーツと小松菜でスムージーなどをつくると、手軽で効率的にビタミンCを摂取できますよ。
ビタミンE
ビタミンEは活性酸素の働きを抑え、肌の細胞の酸化を抑える強い抗酸化作用を持つ、アンチエイジング効果が期待できる栄養素です。肌の血行を促進し、ターンオーバーを促すことで、肌のバリア機能を高めてくれます。 油脂に溶けやすいので、油と一緒に調理をすることで吸収率がアップ。 大豆製品やアーモンドなどのナッツ類、サバなどの魚介類や、パプリカ、ホウレンソウ、さつまいもなどに含まれています。
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乾燥肌の人が食事を取るときのポイント
乾燥対策におすすめの栄養素、食べ物はこんなにたくさん。しかし、実際に食生活に取り入れるとなると、メニュー選びや献立を考えるのに戸惑ってしまいますよね。ここでは簡単に始められる、上手に栄養を摂るためのコツをご紹介します。
栄養素をバランス良く、少量ずつ摂取する
特定の品目の食べ過ぎは避け、できるだけ多くの品目を摂るように心がけましょう。様々な品目を少しずつ取り入れられるような食べ方だと栄養バランスが保たれやすくなります。 メニューを選ぶコツは、
- 具だくさんのメニューを選ぶ
- 見た目が食材によってカラフルなものを選ぶ
こと。料理なら煮物や鍋もの、またサラダやスープなども、多くの品目を摂取できるためおすすめです。
さまざまなタンパク質を取る
肌の健康やうるおいを健やかに保つタンパク質。そのタンパク質を合成する20種類のアミノ酸のうち、9種類は体内で合成できない必須アミノ酸と呼ばれます。タンパク質には、大きく分けて動物性タンパク質と植物性タンパク質の種類がありますが、実は動物性タンパク質と植物性タンパク質では、含まれている必須アミノ酸が異なるのです。 また、アミノ酸はバランスよく摂らないと、不足している必須アミノ酸のレベルにあわせて働きが制限されてしまうので、さまざまな種類のタンパク質を摂取する必要があることもポイント。 偏食をせず、肉、魚、大豆など複数の品目を組み合わせることで必須アミノ酸をバランス良く摂取することが大切です。
野菜を上手に摂取する
乾燥肌におすすめの栄養素は野菜に多く含まれています。しかし生野菜をバランス良く摂取しようとすると、料理のかさが増しすぎたり、体を冷やしてしまったりする場合があります。 野菜炒めや温野菜、スープ、生ジュースなど、メニューにバリエーションを持たせて上手に野菜を取ると良いでしょう。 また、旬の野菜は、旬の時期に一番栄養価が高く、その時期に摂るとよい栄養素が多く含まれていることが多いです。夏には熱バテを防ぐ水分やカリウム、ビタミン類が豊富な夏野菜、冬には体を温める効能のある根野菜類が旬を迎えます。また、コストパフォーマンスも良いので家計にとっても◎。 生の野菜が高い時や、日持ちのしない野菜を多く揃えられないときには、市販の冷凍野菜もおすすめ。収穫後すぐに急速冷凍しているので、栄養価の減少も防げます。
乾燥肌と食べ物に関するQ&A
以上、乾燥肌予防におすすめの栄養素をご紹介してきましたが、ここではできるだけ避けた方が良い、乾燥肌につながりやすい食べ物や飲み物についてご紹介します。
Q. 避けたほうがいい食べ物はある?
A. 乾燥肌を防ぐために、できるだけ食べるのを避けた方がいい食ものとして挙げられるのは、塩分や糖分、脂質の多い食べ物です。 一般的に塩分や糖分、脂質の取り過ぎは健康に良くないものとされていますが、それは肌にとっても同じ。塩分や糖分、脂質を摂取しすぎると健康な肌細胞を作るのに必要なビタミンB群がたくさん消費されてしまい、乾燥や肌荒れにつながるおそれがあります。 特にファストフードは味つけも濃く、栄養が偏りやすい食べ物です。手軽に食べられるのでつい食べたくなってしまうものですが、できるだけ避けたほうが良い食べ物といえるでしょう。
Q. 飲み物で意識したほうが良いポイントは?
A. たとえば、身体を冷やし、血流の流れが悪くなってしまうおそれがある冷たい飲み物はできるだけ避けて、温かい飲み物を選ぶのがおすすめです。また、水分補給のためにコーヒーや緑茶を選ぶのも避けた方がよいでしょう。 体内に取り入れるものは、食べ物だけではありません。乾燥肌予防をするなら、食べ物とともに飲み物の選び方も注意をしておきたいところ。水分補給は間接的に乾燥予防につながるものではありますが、飲み物の選び方や摂り方には注意が必要です。 たとえば、身体を冷やし、血流の流れが悪くなってしまうおそれがある冷たい飲み物はできるだけ避けて、温かい飲み物を選ぶのがおすすめです。 また、水分補給のためにコーヒーや緑茶を選ぶのも避けた方がよいでしょう。これらは亜鉛の吸収を阻害するタンニンや、利尿作用のあるカフェインが含まれるため、注意して摂取するようにしましょう。
食事による健やかな肌作りで乾燥予防を
乾燥肌の改善のためには、まず肌を健やかに保つことが大切。毎日の食事でバランスの取れた栄養を摂取し、正しい生活習慣を心掛けることで、健康なバリア機能を備えたキレイな肌が作られるのです。 ここでご紹介したさまざまな栄養素は、すべて日々の食事で摂ることができます。 しかし忙しい日々の中で毎食、乾燥肌に配慮した食材を用意し、レシピを考えて調理するのは大変なこと。例えば、外食でのメニュー選びやコンビニでの食品選びなどの際に、栄養素を意識することだけでも、立派な乾燥予防の一歩になります。 日々摂取するものだからこそ、そうした日頃の意識の積み重ねを大切にしていきたいですね。無理のない範囲で心掛け、乾燥を防ぐための健やかな肌を手に入れましょう。
【監修医師】
医学博士 久保田 潤一郎 もっと詳しく
久保田潤一郎クリニック院長 元杏林大学医学部助教授(形成外科学)
日本形成外科学会専門医・日本レーザー医学会永年レーザー専門医
杏林大学医学部卒業。慶應義塾大学病院に勤務し、医学博士号取得。後に、杏林大学医学部助教授(准教授)として診療を行うかたわら、後輩の指導にも熱心にあたる。数々の臨床・研究を重ね、多くの形成外科・美容外科の治療のほか、レーザーや光線療法により様々な皮膚のトラブルに対処し、皮膚レーザー療法を確立。国内外の医学会だけに留まらず、各種講演会でも積極的に講演し、自らの治療・基礎研究を主とした様々な情報や最新情報を広く伝えている。