自分は脂性肌(オイリー肌)だから、ニキビができやすく、肌もテカりやすいし、メイクをしても化粧崩れしやすいから困る…。
肌悩みの中でも、そんな肌質に関する悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
一般的に、皮脂が過剰分泌される肌を脂性肌といいますが、肌に影響を与える皮脂そのものは決して悪いものではありません。うるおいのある、すこやかな肌を守るためには、むしろ皮脂は水分と同じようにとても大切なものです。
では、肌にとって重要な皮脂が、なぜ肌に良くない影響を与えてしまうことがあるのでしょうか。
それを理解するために、そもそも皮脂とはどんなもので、肌に対してどんな役割を担っているものかを知る必要があります。
今回の記事では、そんな皮脂に関する基礎知識からトラブル予防に役立つスキンケア方法まで、皮脂による肌トラブルに悩まされないためのお役立ち情報をお届けします。
皮脂の基礎知識
まず皮脂とは一体どんなものなのか。その役割についてご紹介していきましょう。
皮脂とは?
皮脂は、毛穴の中の皮脂腺から分泌される油脂状の物質で、「角質細胞間脂質」「天然保湿因子」とともに皮膚(表皮)の角質層に存在しています。
そして、汗と混じり合って皮脂膜を形成し、皮膚表面を覆っています。
顔の中でも、額から鼻にかけた部分(Tゾーン)は皮脂の分泌量が多く、ニキビや化粧崩れなどの肌トラブルが発生しやすい部位です。
皮脂の役割
皮脂には、肌の保護・抗菌、保湿作用があります。
皮脂は皮膚膜を形成することで、外界から異物が侵入するのを防ぎ、外的ダメージから皮膚を守り、肌からの水分蒸散を抑制する役割を担うことができます。
人の身体には、ウイルスや細菌が体内に入ると、それらをいち早く排除する自然免疫の仕組みが備わっていますが、皮脂の抗菌作用は、まさにこの自然免疫の働きであると言えるでしょう。
これをうまく働かせるためには、正常な皮脂量を保つための皮脂バランスが重要になってきます。
皮脂にまつわる肌トラブルと原因
次は、皮脂がどのような肌トラブルの原因になってしまうのか。
また、皮脂が肌トラブルの原因になってしまうのはどのような状態の時なのか。詳しく解説していきます。
皮脂の過剰分泌によるトラブルと原因
水分量と皮脂量の良いバランスが保てることで、皮膚をすこやかに保つことができますが、皮脂が過剰に分泌されてしまうと、ニキビなどの肌トラブルが起こる場合があります。
余分な皮脂が毛穴に詰まることで、肌の常在菌であるアクネ菌が増殖し、炎症を起こしてしまうのがニキビと呼ばれる状態です。
特に思春期は、皮脂分泌が活発な成長期のため、ニキビができやすくなります。
また、皮脂の過剰な分泌によって、ニキビのほかにも顔のテカリやベタつき、毛穴の開きなども目立ちやすくなってしまいます。
皮脂の取り過ぎ
肌に分泌された余分な皮脂を減らすのが得策なのかというと、そういうわけでもありません。必要以上に皮脂を取り過ぎると、肌を守るためにより皮脂が分泌されてしまうからです。
例えば、過度なクレンジングや洗顔、あぶらとり紙を使用して皮脂を取り除きすぎてしまうと、逆に皮脂が分泌されてしまい、肌トラブルを引き起こしている場合があるので注意が必要です。
ホルモンバランスの乱れ
皮脂分泌を促すホルモンが活性化すると、多くの皮脂が分泌されます。
ホルモンバランスの乱れは、睡眠不足やストレス、偏った栄養バランスの食事などの生活習慣の乱れが影響しやすいといわれています。
皮脂の不足によるトラブルと原因
皮脂の過剰な分泌も肌に良くない影響を与えますが、皮脂の分泌が少な過ぎると肌を乾燥させてしまい、バリア機能の低下につながってしまいます。
肌トラブルを発生させないためには、多すぎず、少なすぎずといった皮脂バランスを保つことが非常に大切になってきます。
バリア機能は、表皮のもっとも外側に位置する角層が持っている機能のことで、外部からの異物の侵入を防ぎ、体内の水分の蒸発を防ぐ働きがあります。
このバリア機能が低下してしまうと、肌荒れをはじめ、さまざまな肌トラブルにつながってしまいます。
例えば、肌の乾燥をさらに促進させるほか、外部から刺激を受けやすくなり、かゆみや赤みなどの症状を引き起こします。
保湿不足
皮脂の分泌は、保湿にも関係があるといわれています。肌の保湿が十分ではないために、適切な皮脂量が分泌されていない可能性があります。
気候、紫外線、クーラー、生活習慣の乱れなど、さまざまな要因で肌は乾燥しがちです。
保湿をしっかり行い乾燥予防するためには、日頃のスキンケアの方法を見直す必要があります。
加齢
加齢とともに皮脂の分泌量は減少してしまうため、歳を重ねると乾燥肌になりがちです。
減少した皮脂量をスキンケアで補うことは、肌トラブルを防ぐポイントになります。
適切な皮脂量を保つスキンケアと生活習慣
皮脂トラブルを防ぐためには、必要十分な水分と油分を保つことが大切です。
ここからは、水分と油分を肌にしっかり保持するためのおすすめのスキンケアをご紹介します。
スキンケアのポイント
まず毎日のスキンケアで肌の水分や油分を補って、あらかじめ肌の乾燥を防ぐ、乾燥予防ケアを心がけるようにしましょう。
例えば、化粧水の後は、乳液やクリームを使って、水分が蒸発するのを防ぐようにするのがおすすめです。
特に洗顔後や入浴後は、水分が蒸発しやすいタイミング。しっかり保湿対策を行うように心掛けましょう。
また使用するアイテムについては、セラミド、コラーゲン、ヒアルロン酸、プロテオグリカンなど、保湿成分が多く入っているアイテムを選ぶと効果的です。
皮脂が過剰に取り除かれやすい洗顔時も、注意すべきポイントがあります。
まず洗顔料は、洗浄力が強過ぎるアイテムを使わないこと。メイク汚れなどをしっかり落とそうとすると、つい洗浄力が強いものを選んでしまいそうになりますが、洗浄力が強ければ強いほど、必要以上に皮脂を取ってしまいやすいので気をつけましょう。
また、洗い方についても注意が必要です。皮膚をゴシゴシと強くこすってしまうと肌に刺激を与えてしまうので、肌に負担をかけないように優しく洗うようにしましょう。
ただし、以上のような乾燥予防ケアをしても、肌の乾燥が改善されない、悪化してしまう場合は、疾患や皮膚トラブルにかかっている可能性も考えられます。
皮脂欠乏症やアトピー性皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹、ドライスキンなど、皮膚の乾燥を症状とする疾患はさまざまあります。
早めに皮膚科へ相談し、正しい対処法を聞くようにしましょう。
生活習慣のポイント
肌は栄養不足や過度なストレス、運動不足、睡眠不足など、ホルモンバランスの影響を受けやすいものです。
日々のスキンケアはもちろん大切ですが、バランスの良い食事、ストレスの発散、適度な運動、十分な睡眠を日々心掛けて、内側からのケアも忘れないようにしましょう。
正しい生活習慣によって皮脂の過剰分泌が抑えられるほか、健康的な肌を維持しやすくなります。
皮脂の分泌バランスを整えて、すこやかな肌状態をキープしましょう
健康的な肌を維持するために重要な皮脂。
正常に働かせるためには、分泌量のバランスを整えるようにすることが大切です。
今回ご紹介したスキンケアや乾燥予防ケア、正しい生活習慣をぜひ取り入れて、すこやかな肌状態をキープしていきましょう。
【監修医師】
医学博士 久保田 潤一郎 もっと詳しく
久保田潤一郎クリニック院長 元杏林大学医学部助教授(形成外科学)
日本形成外科学会専門医・日本レーザー医学会永年レーザー専門医
杏林大学医学部卒業。慶應義塾大学病院に勤務し、医学博士号取得。後に、杏林大学医学部助教授(准教授)として診療を行うかたわら、後輩の指導にも熱心にあたる。数々の臨床・研究を重ね、多くの形成外科・美容外科の治療のほか、レーザーや光線療法により様々な皮膚のトラブルに対処し、皮膚レーザー療法を確立。国内外の医学会だけに留まらず、各種講演会でも積極的に講演し、自らの治療・基礎研究を主とした様々な情報や最新情報を広く伝えている。