日々使うことの多い手元は、皮膚だけでなく、爪のトラブルも多い場所。爪の変色や変形は内臓や血液の疾患が原因だったりすることもありますが、実はトラブル要因の中でも案外気づきにくいのが、“乾燥による爪への影響”です。放っておくと、爪割れや縦ジワ、二枚爪などのトラブルにもつながってしまいます。
人目にふれることも多い手元だからこそ、爪もキレイな状態を保ちたいですよね。今回は、乾燥を防ぎ、キレイな爪をキープするための方法についてご紹介します。
爪が乾燥する原因
爪の乾燥予防のケアを正しく行うためにも、まずは爪が乾燥する原因についてくわしく見ていきましょう。
手洗い、食器洗い
一般的に石鹸や洗剤には、洗浄力を高めるためのさまざまな洗浄成分が含まれています。この洗浄成分は、頑固な油汚れなどを落とす一方で、肌や爪のうるおいを保つのに必要な油分や水分までも徐々に失わせてしまうものです。
手洗い、食器洗いなどは日々の暮らしに欠かせない習慣ですが、毎日続けていると気づかないうちに爪が常に乾いた状態になってしまい、トラブルにつながりやすくなる可能性があります。
アルコール消毒
コロナ禍で日々行う機会が増えた、手指のアルコール消毒。殺菌作用があるアルコール(エタノール)は、爪や指先の水分、油分までも奪ってしまうので、皮膚や爪を乾燥させやすくする要因の一つです。そのため、アルコール消毒を続けることで、爪にツヤがなくなる、硬くなる、割れるといった爪のトラブルが発生しやすくなります。
また、乾燥してもろくなった爪は、表面が薄く剥がれてめくれる二枚爪の状態を引き起してしまうこともあります。今や1日に複数回行うことが習慣になっているアルコール消毒ですが、乾燥をできるだけ防ぐためにも保湿ケアを心掛ける必要があります。
紫外線
意外に知られていないのが、実は紫外線も爪の乾燥の要因となりえるということ。
紫外線は、肌や髪と同様に、爪の下や周囲にある爪を造る組織に影響を与え、爪のうるおいを奪って乾燥を引き起こすといわれています。乾燥によって、爪の縦線が増える、割れやすくなるなどの爪の老化が始まってしまうこともあるので注意が必要です。
日頃、手は紫外線にさらされやすい部位である分、より気をつけておきたい乾燥の要因です。
除光液(リムーバー)
アセトンとよばれる、マニキュアを落とすための成分が含まれていることが多い除光液。油を落とす役割を持つアセトンは、爪を保護する油分や水分まで奪ってしまうため、使うことで爪が乾きやすくなってしまいます。
除光液を使う頻度を少なくするのも一手ですが、近年は、ノンアセトンの除光液も販売されています。除光液を使うなら、アセトンを含まない爪が乾燥しにくいノンアセトンタイプの除光液に切り替えるのも、爪の乾燥を防ぐ対策としておすすめです。
生活習慣の乱れ
生活習慣が不安定になると、ホルモンバランスが乱れ、爪や皮膚の乾燥につながることがあります。
ホルモンバランスの乱れにつながりやすい習慣としては、たとえば、食事の栄養バランスの偏りや睡眠の質の低下の他、ストレスなどがあるといわれています。爪の乾燥を引き起こすのは、外部環境の要因だけではなく、内部環境による要因もあり得ることを覚えておきましょう。
爪の乾燥ケア
では、爪の乾燥を防ぐために、日頃どのようなケアを行ったらよいのでしょうか。ここでは、日常的に取り入れられるケア方法をご紹介していきます。
ネイルオイルを塗る
ネイルオイルとは、爪や指先乾燥を防ぐ、保湿効果のある爪用のオイルのことで、キューティクルオイルともいわれています。クリームよりもベタつきにくく、肌に浸透しやすいのが特徴です。
オイルが爪になじむよう、爪の甘皮部や側面などを含めた爪全体に揉むように塗ることで、乾いた爪にうるおいを届けることができます。
サイズはコンパクトで化粧ポーチにも入れやすいので、携帯にも便利。各商品で香りやテクスチャーが異なっているので、好みのものを選んで日頃のネイルケアを行うのがいいでしょう。
ネイル美容液を塗る
爪のケア用品として、ネイルオイルの他にも爪専用の美容液というものも販売されています。
ネイル美容液は、植物性オイルの他、髪や爪、皮膚の角質層を作る成分ケラチンなどが配合されており、爪によくなじむ使いやすいアイテムです。使うことで、爪に保湿成分と栄養成分を届けることができるので、爪の乾燥を防ぎ、うるおいのある健康的な爪を保つことができます。
使う際は、爪や甘皮にマッサージするようにしてしっかり塗り込みましょう。
ハンドクリーム、ジェルを塗る
日頃のハンドケアによく使う、ハンドクリームやジェルなどのアイテムも爪のうるおいを保つのにおすすめです。
手の平や甲だけではなく、指や爪にもしっかり塗ることで爪の乾燥対策をすることができます。一般的なハンドクリームの他、爪ケアも一緒にできる手・爪兼用のものなども販売されているので、いろいろな商品をチェックして、自分に合うものを使ってみるといいでしょう。
香りもいろいろなものがあるので、保湿効果はもちろん、香りの良さも考慮しながらお気に入りの商品を見つけてみるのもいいかもしれません。
洗剤は肌に優しいものを使う
水仕事、食器洗いで酷使される指先や爪。特に食器洗剤などは油脂を落とすことを目的に作られているので、洗浄力が強いものが多いです。
強力な洗剤を素手で使うと、界面活性剤により手や指、爪周りの必要な皮脂までもが洗い流され、うるおいが失われて乾燥してしまいます。
水仕事はできるだけゴム手袋を着用して行うようにしましょう。手洗いの際もなるべく肌にやさしい成分のハンドソープを選び、手と爪の乾燥を防ぐよう心がけを。
手洗いの後はハンカチで手を拭く
空港やデパート、飲食店などのトイレに設置されているハンドドライヤー(ジェットタオル)。外出時、お手洗いなどで使用することがありますが、強力な風で一気に乾燥させるのは危険だと知っていましたか?
手の表面の水分が蒸発する際に、肌や爪の水分まで一緒に奪ってしまう「過乾燥」という現象が起きてしまうため、手洗い時はできるだけハンカチやペーパータオルでふき取ることをおすすめします。手洗い後には忘れずに爪周りにハンドクリームを塗りましょう。
きれいな爪をキープするための乾燥予防
こまめなケアで爪がキレイになったら、その状態をずっとキープし続けたいですよね。そう思う方におすすめの乾燥予防策についてもご紹介します。
マニキュアを落とした後は保湿を怠らない
皮脂と水分を奪うアセトンが配合された除光液は、爪を乾燥させやすいため、マニキュアを落とした後は保湿を忘れずに。
オイル、美容液、クリームなどの保湿効果のあるケア用品を使って、爪の保湿ケアを習慣づけるようにしましょう。
また、マニキュアを塗る際は、ベースコートを欠かさないことで、爪を保護しやすくもなります。UV対策効果のあるベースコートなどもあるので、紫外線の影響からも守ることができます。
外的刺激を避ける
きれいな爪をキープするためには、外部からの刺激から爪を保護することも大事。たとえば、食器洗いや掃除など、摩擦が発生する機会が多い家事は、爪が外部からダメージを受けやすいシーンの1つ。普段から掃除用のゴム手袋をして家事を行うなど、爪を外部刺激から守る対策をこまめにするのがおすすめです。
他にも、爪の乾燥の原因となる紫外線対策として、UVカット効果のあるトップコートを塗布する方法もあります。できるだけ予防策を講じるよう心掛けましょう。
食事を改善する
生活習慣の乱れが皮膚や爪の乾燥を引き起こすなら、体の内側からの乾燥対策も必要。
また、栄養不足も爪がもろくなる原因となりえるため、まずは食生活を見直してみるのがおすすめです。タンパク質、ビタミンA、ビタミンE、亜鉛、鉄分など、爪の栄養となる成分を含んだ栄養バランスの取れた食事をとるなどして、体の内側から乾燥を予防するようにしましょう。
乾燥を防いで、いつでもキレイな爪を手に入れる
いかがでしたか?爪は乾燥によって、思っているよりもダメージを受けやすい場所だということが分かっていただけたのではないでしょうか。
手洗いや家事などの手を使う場面が多い暮らしの中で、爪の乾燥予防とこまめなケアを心掛けて、健康的でキレイな爪をキープしていきましょう。
【監修医師】
医学博士 久保田 潤一郎 もっと詳しく
久保田潤一郎クリニック院長 元杏林大学医学部助教授(形成外科学)
日本形成外科学会専門医・日本レーザー医学会永年レーザー専門医
杏林大学医学部卒業。慶應義塾大学病院に勤務し、医学博士号取得。後に、杏林大学医学部助教授(准教授)として診療を行うかたわら、後輩の指導にも熱心にあたる。数々の臨床・研究を重ね、多くの形成外科・美容外科の治療のほか、レーザーや光線療法により様々な皮膚のトラブルに対処し、皮膚レーザー療法を確立。国内外の医学会だけに留まらず、各種講演会でも積極的に講演し、自らの治療・基礎研究を主とした様々な情報や最新情報を広く伝えている。