季節の変わり目や湿度の低いシーズンなどに多い、顔の乾燥のお悩み。オフィスでのデスクワークの場合は、年中エアコンの効いた室内にいるため、知らず知らずのうちに顔の乾燥が常態化してしまっているなんてことも…。
肌の乾燥によって化粧ノリや肌触りが悪くなるだけでなく、つっぱり感やひどくなると本格的な乾燥肌になってしまい、医師の治療が必要になってしまう場合もあります。
取り返しがつかなくなる前に、早めの対策と乾燥予防が大切です。今回は、自分でできる顔の乾燥チェックと、今から取り組める乾燥予防対策をご紹介しますのでぜひ実践してみましょう。
顔の乾燥に関するよくある悩み
まずは顔の乾燥サインを見逃さないことが大切。顔の乾燥チェックポイントを確認しましょう。
粉ふき、皮むけ
肌表面が白い粉を吹いたようになってしまったり、薄い皮が剥けて手触りもカサカサするような状態。これは肌の内部、角層内の角質細胞が乾燥によってめくれて生じる症状です。
角層内の隙間はセラミド等で構成された細胞間脂質で満たされていますが、角質層に隙間ができて保持されていた水分が蒸散して細胞間脂質が減少してしまうと、肌のバリア機能が衰えて、肌が乾燥状態に。するとちょっとした外部刺激でも肌表面の角質がはがれやすくなり、刺激に敏感になってしまうのです。
また、古い角質が肌表面に蓄積して乾燥し、粉をふいたり、皮がむけたりするケースもあります。これは肌の生まれ変わりであるターンオーバーの乱れによるものや、角質肥厚(かくしつひこう)などが原因。
そのほかにも、過度なピーリング、洗顔後に肌がつっぱるなどの過剰な洗顔、保湿不足などの誤ったスキンケアによって粉ふきや皮むけが生じる場合があります。
赤み
乾燥している肌が外部刺激にさらされ、炎症が生じかけている状態では、肌に赤みやかゆみなどが生じます。
素肌が外部から受ける外的刺激には様々なものがあり、洗顔時などの摩擦や日常的な紫外線も、肌にとっては刺激となります。PM2.5や空気中のホコリに付着した雑菌、花粉などが原因になることも。また、エアコンによって引き起こされる乾燥にも注意が必要です。
症状が進むと、炎症がひどくなって皮膚炎をおこしたり、湿疹やできものなどの肌トラブルが発生する場合もあるため、悪化させないことが第一です。
あまりにも赤みがひどくなっている場合はまず皮膚科を受診するようにしましょう。医師の診断を受け、病気としての治療を行った後に保湿対策を見直しましょう。
ニキビ
乾燥によって肌細胞の水分量が減り、肌のバリア機能が低下すると、ニキビもできやすくなります。
まず、バリア機能の低下することで、古い角質がうまくはがれ落ちず、角層が厚くなり毛穴に皮脂や角質がたまりやすくなってしまいます。
そうすると毛穴がつまり、ニキビの原因とされているアクネ菌が増殖し、ニキビが発生してしまうのです。
このように、毛穴のトラブルを引き起こす要因としても肌の水分量の低下は見逃せないものなのです。
顔の乾燥予防に役立つ保湿ケアアイテム
少しでも顔の乾燥に心当たりがあるようなら、しっかりケアして本格的に乾燥を予防しましょう。
基礎化粧品
基礎化粧品とは、メイク用品ではなくスキンケアアイテムを指します。化粧水・ローション、美容液、乳液、クリームなど様々なアイテムがありますが、目的によって使い分ける必要があります。
化粧水で肌にたっぷりと水分を補給し、美容液で美容成分を与えます。乳液とクリームは肌に油分を与え、水分を逃がさないように肌にフタをすることが目的です。目元・口元用など、部分ケアに適したアイテムもあります。
美白やシミケア、小じわケアができる機能に特化したものなど、プラスアルファのアイテムも種類が豊富。オールインワンで使える多機能なアイテムなら、肌に摩擦ストレスをかけることなく手軽にお手入れできますよ。
また、紫外線も肌に乾燥を招く要因の一つ。外出時には日焼け止めを塗ることも忘れないようにしましょう。
アイテムの中には、単に素肌を紫外線から守るだけではなく、ヒアルロン酸などの保湿成分が配合された保湿効果が期待できるものもあるので、いろいろチェックしてみるとよいでしょう。
オイル
肌を柔らかくしたり、肌に補給した潤いにフタをしたりする役割を持つオイル。
植物性や動物性など様々な種類があり、ブースターとして使う場合はスキンケアの前に使用します。洗顔後にオイルを浸透させることで肌をやわらかく整えることで、後に使う化粧水の肌なじみを良くしたり、角質ケアなどにも効果が期待できます。
スキンケアの後に塗る場合は、オイルの膜を作ることで、化粧水や乳液などの水分の蒸発を防ぐフタとしての効果があります。
たとえば、ラベンダーなどの精油を配合したオイルは、香りによるリラックス作用もあるため、入眠前のスキンケアなどによいでしょう。
また、自然由来のオイルで顔だけではなく髪にも使えるホホバオイル、油分でしっかり皮膚をコーティングして水分の蒸発を防ぐワセリンなどもおすすめです。
ミスト
肌の水分量アップにおすすめの霧吹きタイプのスキンケアアイテムで、メイクの上から使える優れもの。
化粧崩れを予防したり、日中にうるおいを補給したりするのにぴったりです。
化粧水と同じく水分が多いため、乾燥肌の人はヒアルロン酸配合など保湿効果が期待できるうるおい成分が含まれているタイプを使うとよいでしょう。
顔に吹きかけた後、乳液やクリームでカバーするとより潤いをキープできます。軽くティッシュで押さえるとテカリや化粧崩れが抑えられますよ。
クリーム
乳液よりも油分が多いクリームは、肌の潤いを閉じ込める高い保湿効果が期待できます。
こっくりもったりとした濃いテクスチャーで肌にぴったりとフタをするので、特に乾燥が気になる箇所に定期的に塗布して徹底的に乾きをブロックしましょう。
たとえば熱いお湯によって肌の水分が蒸発し、肌が乾燥しがちな入浴後などは、ボディクリームでしっかり保湿をして乾燥対策するとよいでしょう。
顔の乾燥を防ぐために意識したいポイント
人体の中でも露出が多く、もっとも乾きやすい部分である顔。乾燥を防ぐためにはどんなことに気を付けたらよいのでしょうか。
保湿を徹底する
スキンケアにおいて基本かつ重要なポイントは、朝晩の洗顔後すぐの保湿を欠かさないことです。
洗顔すると洗顔料やお湯によって、肌を覆う皮脂膜や天然の保湿成分なども流れてしまうことがあります。
保湿成分が配合された石けんを選んだり、ぬるま湯の温度にも気を遣うようにしてください。
洗顔後には、必ず化粧水で潤いを補ってから乳液やクリームなどでカバーするように心がけましょう。
日中も、乾燥しやすい部位にはオイルやクリームを塗ったり、顔全体にミストを吹きかけたりしてこまめに潤いを保つことが大切です。
気になる肌荒れや加齢サインには、定期的にスペシャルケアを行うとよいでしょう。
シートマスクなら顔全体にたっぷり潤いを補給できますが、さらに上からラップで覆えばより保湿成分が角層まで浸透しやすくなり効果的です。
スキンケアは優しく行う
肌の表皮の厚さは0.06~0.2mm、そして表皮の中でも、角層の厚さは部位によっては約0.02mmととても薄いもの。
顔には目の周りや唇など、皮膚が薄く乾燥しやすい部位、つまり非常にダメージを受けやすい部位がたくさんあります。
そんなデリケートな顔ですから、洗顔時はゴシゴシと強く洗わないよう注意!
化粧水はパンパンとパッティングせず、そっと顔を包み込むように優しくハンドプレスをして丁寧に肌になじませて。
肌に刺激の強いアイテムは避ける
乾燥した肌はバリア機能も衰えているため、化学的な刺激に弱い敏感肌になっています。使用するスキンケア製品の選び方にも注意が必要です。
さまざまあるアイテムの中でも、アルコール(エタノール)、パラベン、香料、鉱物油などは肌に刺激を与える可能性が高いため、避けたほうが吉。また、洗浄力の強いピーリング剤、クレンジング剤も、使用を避けたほうがよいでしょう。
成分表をチェックして刺激の強い成分が入っていないか確認するのはもちろん、心配な場合は腕の内側などでパッチテストをして自分の肌タイプに合うアイテムを選ぶようにしましょう。
生活習慣を見直す
肌も細胞のひとつひとつからできています。生活習慣を整えることで、ホルモンバランスの改善が期待できるといわれています。
生活習慣の見直しポイントは主にこの5つ。
- 栄養素のバランスが取れた食事をする
- 便秘をなおす
- 質の良い睡眠を取る
- 定期的な運動をする
- ストレスをため込まない
また、嗜好品(アルコール、タバコ)や糖分、塩分、脂質の摂り過ぎにも注意しましょう。
ホルモンバランスが整うと、肌のターンオーバーが安定しやすくなって正常な代謝サイクルを行えるようになるので、バリア機能が保たれやすくなるといわれています。
健やかな肌を保つには健やかな生活から、ということですね。
顔の乾燥にまつわるQ&A
以上、顔の乾燥にまつわる基本情報をご紹介してきましたが、ここからは、さらに知りたい顔の乾燥についての質問にお答えしていきます。
Q. 顔の乾燥がひどいときのメイクはどうすればいい?
A. もし、顔の乾燥がひどい状態でメイクをしなければならないときは、十分に保湿した後にメイクを始めるようにしましょう。
メイクした後も長時間乾燥しないように、コスメアイテムも保湿成分が多く入ったものを使用して、できるだけ肌を乾燥させないように、乾燥予防対策を行いましょう。
Q. 顔の乾燥に効果的な市販薬はあるの?
A. 顔の乾燥の改善を促す市販薬があります。
かゆみや赤み、ひび割れなど肌の症状に合わせて薬を選ぶとよいでしょう。
症状が改善されない場合は、単なる乾燥ではなく、他に原因がある可能性があります。
無理に使用を続けずに、早めに皮膚科などの専門医療機関に相談するようにしましょう。
顔の乾燥には、徹底した乾燥予防対策を
身体の中でももっとも外気にさらされ、紫外線などの外部刺激を受けやすいのが顔の皮膚。
顔の乾燥サインを見つけたら、それは本格的な乾燥のはじまりとも言えます。
今回の記事でご紹介したことを参考に、スキンケアのお手入れ方法や環境、生活習慣などに乾燥の要因がないか見直すとともに、これ以上ひどくなる前に徹底的な乾燥予防を行いましょう。
しっかりと肌を潤わせ、もともと肌が持っているバリア機能をしっかりと回復してあげることで、乾燥にも負けない健やかな状態を保つことができます。
乾燥のサインを見逃さないよう、日々、こまめに顔の乾燥コンディションを確認して、乾燥予防ケアを心がけるようにしましょう。
【監修医師】
医学博士 久保田 潤一郎 もっと詳しく
久保田潤一郎クリニック院長 元杏林大学医学部助教授(形成外科学)
日本形成外科学会専門医・日本レーザー医学会永年レーザー専門医
杏林大学医学部卒業。慶應義塾大学病院に勤務し、医学博士号取得。後に、杏林大学医学部助教授(准教授)として診療を行うかたわら、後輩の指導にも熱心にあたる。数々の臨床・研究を重ね、多くの形成外科・美容外科の治療のほか、レーザーや光線療法により様々な皮膚のトラブルに対処し、皮膚レーザー療法を確立。国内外の医学会だけに留まらず、各種講演会でも積極的に講演し、自らの治療・基礎研究を主とした様々な情報や最新情報を広く伝えている。