乾燥性皮膚炎は、皮膚の乾燥が進んでひび割れや皮むけが生じる状態などを指します。皮脂欠乏性湿疹・乾皮症と呼ばれる病症が含まれます。
顔よりも足などの体の部位に発生しやすい皮膚炎で、意識して全身に保湿などのスキンケアを行うことが大切。
しかし、頑張って乾燥予防を行なっていても、季節の変わり目や加齢などが原因で症状が発症してしまう時もあります。
今回はそんな乾燥性皮膚炎の症状や改善方法について、詳しくお伝えします。
乾燥性皮膚炎の特徴と足に見られる症状
乾燥性皮膚炎は、足(脚)に見られやすい皮膚炎でもあります。
ここではそんな「足」に特化して、どんな症状が出やすいのかを紹介します。
乾燥性皮膚炎とは
乾燥性皮膚炎は乾燥により皮膚膜が減少し、バリア機能が低下した肌が刺激を受けることで発症する皮膚の病気です。老人性乾皮症や皮脂欠乏性皮膚炎がこれにあたります。
空気の乾燥や季節の変化、加齢により皮脂が減少することなどが原因で、赤みや水ぶくれ、鱗屑のような湿疹が出る症状が特徴ですが、この症状はじんましんやかぶれ・肌荒れの症状とも似ている場合があるので、ケアを行う際は注意が必要です。
足に見られる乾燥性皮膚炎の主な症状
乾燥性皮膚炎は、乾燥が進んだ刺激に敏感で弱った状態の肌に起こりやすい皮膚疾患。顔よりも足や背中などの部分に多くみられるのも特徴です。
見るからに肌の表面がカサカサしている、肌から白い粉が吹くなどひどい乾燥状態にある場合は、乾燥性皮膚炎を疑った方が良いかもしれません。
強いかゆみを感じて引っ掻くことで、炎症がひどくなってしまうので、肌に刺激を与えないよう心がけましょう。
乾燥性皮膚炎になる仕組みと原因になりやすい行動
皮膚症状をしっかりと把握すること、肌荒れの原因となる物質は何なのかを調べることも、改善への近道です。
ここでは乾燥性皮膚炎を引き起こす仕組みや原因についてお伝えします。
乾燥性皮膚炎になる仕組み
乾燥性皮膚炎は、皮膚の乾燥が進んでひび割れや皮むけが生じる状態。皮膚の角質層の水分が不足し、皮膚が柔軟性を失っていきます。
これらが悪化して皮膚の乾燥が進むことで、強いかゆみなどを伴い、次第にゴワゴワとした肌触りになったり白っぽい粉のような皮むけなどが生じたりすることも。さらに悪化すると赤みや湿疹が生じます。
そのほかにも、肌の乾燥症状によっては、脂漏性皮膚炎や老人性乾皮症、アトピー性皮膚炎などの様々な病気の可能性があります。
足は特に、汗疱や水虫、乾癬、白癬菌などによる症状が出やすい部位。気になる場合はまず皮膚科を受診し、診断を受けることをお勧めします。
乾燥性皮膚炎の原因になる主な行動
過度な摩擦
摩擦は、肌のダメージになります。そのため、乾燥した体を洗うときやマッサージなど日常生活で強くこすっていると、それが刺激になり乾燥性皮膚炎を引き起こす可能性があります。
そのほか、衣服による擦れも原因になります。
肌に刺激を与えやすい衣服を選んでいる
肌と衣服の擦れが意外と肌にダメージを与えているってご存じですか?
健康な状態の皮膚なら刺激に感じないようなことでも、乾燥性皮膚炎を引き起こしている肌にとっては刺激になってしまいます。
そのため、チクチクと痛みを感じる服や靴下、タイツなどは要注意。慢性的に刺激を感じることがストレスになり、より強いかゆみを感じることにもつながります。
ボディクリームなどで保湿をしていない
顔に比べて体の保湿は十分にできていない方も多くいます。特に入浴後は乾燥しやすいため保湿による肌の保護を意識すると良いでしょう。
お風呂上がりに保湿を怠ると、角質層の水分が不足している状態を助長させる原因になります。
特に乾燥しやすい方は、長時間水分を与え続け、乾かさない乾燥予防ケアがおすすめ。毎日のスキンケアルーティーンに体の乾燥予防ケアも組み込むと、習慣化できるのでおすすめです。
足が乾燥性皮膚炎になったときの対処法
乾燥性皮膚炎になってしまったら、どう対処すると良いのか。その対処法をお伝えします。
どれも今日から始められることなので、症状に思いあたりのある方はぜひ試してみてくださいね。
生活習慣を見直す
良質な睡眠を取る
生活習慣を正すことで、肌のターンオーバーも整いやすくなります。特に肌は寝ている間に再生するので、睡眠の質は大切。
心身ともにリラックスした状態で就寝すると良質な睡眠に繋がりやすいので、入眠時にアロマを焚く、ハーブティーを飲むなど自分なりのリラックス方法を持っていると良いでしょう。
湯船の温度は40度以下に設定する
人間の皮脂は40度を超えると溶け出してしまう性質があるため、あまり熱いお湯に浸かるのはNGです。
血流が良くなることでかゆみを強く感じる場合もあるため、つかる時間も15分程度を目安にすることがおすすめです。
清潔を保ちたいからといって体を洗う際にナイロンタオルなどでゴシゴシこすらないようにすることも大切なポイントです。
乾燥した肌は刺激に敏感なので、体を洗う時も手でせっけんを泡立てやさしく撫で洗いするか、綿などの刺激が少ないタオルを使うように気をつけましょう。
毎日、体を保湿する習慣をつける
保湿する習慣をつけることで、乾燥している部位の改善を図ることができます。
顔だけでなく体の乾燥予防を習慣づけることも合わせてできると、足やひじなど乾きがちな部位の乾燥を食い止めることができるためさらに安心です。
顔にも体にも使用できるオールインワンアイテムなど、便利に使える商品を用意しておくと、スキンケアを負担に感じにくいのでオススメです。
乾燥しやすい部位をケアする
足(脚)の中で、特に乾燥しやすい部位は脛(すね)、かかとです。
脛のケアは、とにかく十分に保湿をすることが大切。
お風呂上がりや乾燥が気になった時に、化粧水やボディオイル、ボディミルク、ボディクリームなどの保湿剤を塗ると良いでしょう。ローションや乳液、美容液などの成分をひと塗りで肌に届けることができるオールインワンアイテムを使用することも効果的です。
かかとのケアは、まずは硬くしないことが大切。
尿素製剤などを用いて角質を柔らかく保つケアを行いましょう。もし硬くなってしまったら角質を取り除くことから始めると良いでしょう。入浴時に軽石やフットスクラブを使用して硬くなった角質をケアした後で、しっかり保湿をすると柔らかくてツルツルなかかとをキープできますよ。
皮膚科を受診し医師に相談する
セルフケアを続けてもイマイチ肌が改善されない場合は、皮膚科へ行き、プロの力を借りることも大切です。発疹などの症状が長引くと、患部が色素沈着を起こす可能性もあります。
皮膚科で診察をしてもらうと医師が肌の状態を見て適切な治療をしてくれるため、自己流のケアを続けるよりも効果を感じやすく、肌の悩みも早く解決するでしょう。
皮膚科では主に塗り薬としてヘパリン類似物質などの保湿剤や、炎症を抑えるステロイド外用薬、かゆみを抑える抗ヒスタミン薬などが処方される場合があります。
ステロイド外用薬と聞くと副作用を心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、用法用量を守って使用すれば、効果的に使用できるお薬です。
自己判断で軟膏の使用や飲み薬の内服をやめることなく、指示された期間しっかり使用することで、症状が早く改善されるため、医師の診断に従いましょう。
乾燥予防で乾燥性皮膚炎を改善」
乾燥性皮膚炎は乾燥により皮膚膜が減少し、バリア機能が低下した肌が刺激を受けることで発症する皮膚の病気です。
空気の乾燥も症状を悪化させる原因因子となるため、加湿器を使用して室内の湿度を上げる、肌への刺激が少ない成分を使っている洗剤や石鹸を使用するなど、日常的に体全身を乾燥や刺激から守る工夫が必要です。
特に高齢者の方に起きやすい症状ではありますが、年齢だけでなく肌の皮脂膜の減少や乾燥肌が刺激を受けることなども症状が発症する原因になります。
肌の刺激になっている物質が分からない場合は、アレルギーを引き起こす元になっている原因物質を確かめるため血液検査が必要な場合もあります。そのため、毎日の乾燥予防や保湿ケアを続けても症状に改善が見られない場合はなるべく早めに皮膚科にかかることをお勧めします。
プロの力も借りながら、日々のスキンケアもコツコツを行い、乾燥知らずの健やかな肌を目指しましょう。
【監修医師】
医学博士 久保田 潤一郎 もっと詳しく
久保田潤一郎クリニック院長 元杏林大学医学部助教授(形成外科学)
日本形成外科学会専門医・日本レーザー医学会永年レーザー専門医
杏林大学医学部卒業。慶應義塾大学病院に勤務し、医学博士号取得。後に、杏林大学医学部助教授(准教授)として診療を行うかたわら、後輩の指導にも熱心にあたる。数々の臨床・研究を重ね、多くの形成外科・美容外科の治療のほか、レーザーや光線療法により様々な皮膚のトラブルに対処し、皮膚レーザー療法を確立。国内外の医学会だけに留まらず、各種講演会でも積極的に講演し、自らの治療・基礎研究を主とした様々な情報や最新情報を広く伝えている。