アトピー性皮膚炎は乾燥肌に似た症状も多くありますが、様々な要因が重なっていることが多い病気です。
原因として考えられていることも様々にあり、直接的な原因を特定することが難しいことも特徴です。
そんなアトピー性皮膚炎ですが、治療のポイントは保湿と薬により、症状を軽減させること。
敏感肌と似た特性もあるため、肌のバリア機能が正常に働くようにするためにも、乾燥予防をしっかりと行うことが大切です。
今回は保湿のポイントや、治療内容などについて詳しくご紹介します。
アトピー性皮膚炎の原因と症状
アトピー性皮膚炎の原因は様々。
この章ではどんな症状をアトピー性皮膚炎というのか、症状の特徴と発症の原因として考えられていることをご紹介します。
アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎は、様々な要因が重なっていることが多い病気です。
原因として考えられていることは、肌のバリア機能の低下や、ちりやほこり、汗、細菌、カビ、ストレスなど。
同じ要因が重なった場合でも、アトピー性皮膚炎を発症する人としない人がいるため、何が原因かは一概には言えないところもアトピー性皮膚炎のやっかいな部分です。
肌のバリア機能について知ることは、スキンケアを行う際もとても大切。
こちらの記事でわかりやすく説明していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎は、乾燥肌に似た症状も多くありますが、1番分かりやすい特徴としては強い痒みを伴う湿疹が生じること。
皮膚が赤くなってブツブツができる、カサカサと乾燥して皮膚が剥けるなどの症状がなかなか治らないという方は、アトピー性皮膚炎の可能性があります。
症状があるところを掻きむしったり、刺激したりすると悪化させやすいため、かゆみが生じたら幹部を清潔にし、かゆみ止めの軟膏を塗布することがおすすめです。
必ず説明書を読んで、記載されている適量を目安に使うよう気をつけましょう。
かゆみ止めは市販のものでも良いですが、なかなか症状が改善されない場合は皮膚科に行き、塗り薬を処方してもらいましょう。
アトピー性皮膚炎と乾燥肌の違いについて、詳細をまとめた記事がこちらです。ぜひ、目を通してみてくださいね。
アトピー性皮膚炎の主な治療法
アトピー性皮膚炎は、保湿と薬物による治療を同時に行うことが多くあります。
この章では「保湿による肌の保護」と「薬物による治療」について、詳しくお伝えします。
どちらか一方だけでなく、両方とも治療にかかせないこと。ぜひ参考にしてみてくださいね。
保湿による肌の保護
肌を保湿することは、アトピー性皮膚炎の原因になり得る、肌のバリア機能の低下を防ぐ効果があります。
肌のバリア機能は、乾燥やハウスダスト、細菌などの外部刺激から肌を守る役割があるため、バリア機能が低下した肌はアトピーの要因と考えられているものの影響を受けやすくなってしまうため注意が必要。
乾燥のほか、痒みによって肌を掻きむしることも、肌のバリア機能の低下につながるため避けたほうが良いでしょう。
バリア機能が低下した肌は、アトピー性皮膚炎になりやすく、また悪化させやすい状態を作るため、保湿による保護で乾燥予防し、かかない工夫を心がけましょう。
薬物による治療
皮膚科専門医の診断のうえで処方された、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などにより治療を行うことも、症状の改善につながります。
ステロイド外用薬は効果的に炎症を抑え、タクロリムス外用薬は身体の免疫反応が高まっている状態を正常に整え、皮膚の炎症を抑える効果があります。
タクロリムス外用薬は、ステロイド外用薬と比べて分子量が大きいため、バリア機能の回復した健康な皮膚で使用しても、ほとんど吸収されないという特性があります。
アトピー性皮膚炎の悪化を防ぐ入浴・保湿のポイント
アトピー性皮膚炎は乾燥に弱いため、乾燥予防をしっかりと行うことがポイント。
特に肌が敏感になっている、入浴後のケアについてご紹介します。
顔や体の洗い方や、肌にうるおいを与える際のポイントなど、すぐに実践できることばかり。ぜひ参考にしてみてくださいね。
入浴時のポイント
入浴やシャワーの際は、よく泡立てた石けんで丁寧に身体や顔を洗うよう注意しましょう。
石けんの成分が皮膚に残っていると、肌への刺激になりアトピー性皮膚炎の悪化につながることもあるため、石けんはしっかりと水で流すことも大切です。
顔や体を拭くタオルも清潔なものを使うよう注意しましょう。
また、肌のうるおいを保つために必要な皮脂は、40℃を超えると溶け出す性質があります。そのため、湯船に浸かる際には、温度を40℃以下のぬるめに設定することも気をつけましょう。
また熱いシャワーを浴びると、一時的にかゆみを抑えられているように感じますが、後からかゆみが増強するので厳禁です。
保湿のポイント
アトピー性皮膚炎の方の肌は、うるおいを持続させにくい傾向があります。そのため、こまめに保湿して乾燥を避け、肌のバリア機能の低下を防ぐことが大切です。
入浴後や洗顔後だけではなく、日中も乾燥しないように保湿アイテムを塗ると良いでしょう。
アトピー肌の方は敏感肌であることも多いので、使用する保湿アイテムは香料などを使っていない、肌への刺激が少ないものを選ぶと安心です。
顔の保湿には、化粧水のあとに必ず乳液やクリームも使用しましょう。化粧水で肌にうるおいを与え、乳液やクリームで水分の蒸発を防ぐというステップが大切です。
身体の保湿にはワセリン、クリーム、ローションなどを使うことが多いですが、自分の肌になじみやすいもの、使用感が好みのものを使うと良いでしょう。
肌の保湿について、こちらの記事にまとめました。基本のステップがしっかり分かる内容なので、ぜひ読んでみてくださいね。
アトピー性皮膚炎は乾燥予防がケアのカギ
アトピー性皮膚炎には、徹底的な乾燥予防を行うことが大切。使用するスキンケアアイテムは、保水効果の高いセラミドや、ヘパリン類似物質などの成分が含まれた商品を選ぶとよいでしょう。
尿素や硫黄の成分が入っているものもありますが、アトピー性皮膚炎の場合、乾燥させてしまう可能性があるので注意が必要です。
乾燥予防のケアは顔だけでなく、全身行うことも忘れずに。
また、スキンケアの「与えるケア」だけでなく、汚れを洗い流す「落とすケア」も大事なポイント。
脱脂力が高すぎる洗浄剤を使用すると、必要なうるおいまで奪われて乾燥が進む場合もあるため、自分の肌に合うアイテムを選ぶよう気をつけましょう。
毎日のスキンケアは大切ですが、油分を与えすぎると、ニキビや肌荒れの原因になることも。
自分の肌タイプや肌の状態をしっかり観察して商品を選び、ケアを行うこともポイントです。
もし、どのスキンケアアイテムも肌に合わず刺激になってしまうようなら、赤ちゃんでも使える優しい使い心地のベビー用アイテムを使ってみるのもおすすめです。
症状が改善しないときはすぐに皮膚科医に相談し、適切な薬を処方してもらいましょう。
また薬を塗るときは、必ず幹部の汚れを落とし、清潔な状態で使用することも大切です。
アトピー性皮膚炎は厄介な症状ですが、乾燥予防をしっかりと行い、適切な治療をすれば症状が軽減したり、改善に近づいたりという効果が期待できます。
適切なケアを行い、すこやかな毎日を過ごしましょう。
【監修医師】
医学博士 久保田 潤一郎 もっと詳しく
久保田潤一郎クリニック院長 元杏林大学医学部助教授(形成外科学)
日本形成外科学会専門医・日本レーザー医学会永年レーザー専門医
杏林大学医学部卒業。慶應義塾大学病院に勤務し、医学博士号取得。後に、杏林大学医学部助教授(准教授)として診療を行うかたわら、後輩の指導にも熱心にあたる。数々の臨床・研究を重ね、多くの形成外科・美容外科の治療のほか、レーザーや光線療法により様々な皮膚のトラブルに対処し、皮膚レーザー療法を確立。国内外の医学会だけに留まらず、各種講演会でも積極的に講演し、自らの治療・基礎研究を主とした様々な情報や最新情報を広く伝えている。